【精神療法ガイド】代表的な3つの心理療法と「来談者中心療法」を徹底解説
薬物療法と併用される「精神療法」とは?
精神療法(心理療法)は、薬物療法と並ぶ「心の病気」の主要な治療法の一つです。
薬物療法が脳内の神経伝達物質の異常にアプローチするのに対し、精神療法は、カウンセリングなどを通じて患者さんの精神面に働きかけ、心理的な問題の改善を目指します。
心の病気は、遺伝、環境、性格、価値観、ストレス耐性など様々な要因が複雑に絡み合って発症するため、薬物療法と精神療法を併用することで、より高い治療効果が期待されます。
精神療法の主な目的は、患者さん自身が、
- 自分自身や人間関係
- 物事への考え方(認知)
- 出来事に対する対処法
を見直し、それらを改善できるようにサポートしていくことです。
長期的な治療となることが多いため、治療者と患者さんとの間に信頼関係を築くことが、治療の成功に不可欠です。
代表的な3つの精神療法
精神療法には多様な種類がありますが、特に代表的なものとして以下の3つが挙げられます。
| 種類 | 創始者・主な特徴 | 目的とするアプローチ |
| 1. 来談者中心療法 | アメリカの心理学者 カール・ロジャーズ。非指示的カウンセリングの基盤。 | 来談者の自己回復力を信頼し、傾聴を通じて自主的な成長と問題解決を促す。 |
| 2. 精神分析療法 | ジークムント・フロイト。最も古い心理療法の形態。 | 無意識に抑圧されたトラウマや葛藤を意識化し、問題の根本的な解決を目指す。 |
| 3. 認知行動療法 (CBT) | 認知療法と行動療法が統合されたもの。 | 現実の出来事に対する「考え方(認知)の歪みや偏り」と「行動パターン」に気づき、修正することで、ストレスを軽減し、気持ちを楽にする。 |
【深掘り解説】来談者中心療法(PCA)とは?
来談者中心療法(Person-Centered Approach: PCA)は、アメリカの臨床心理学者カール・ロジャーズによって提唱されました。
カウンセリングの基礎となる考え方に大きな影響を与えた、きわめて重要な精神療法です。
核心となる考え方
従来の精神療法が「治療者中心」で、医師やカウンセラーが患者の問題を診断し、指示や批判、説得を行う傾向があったのに対し、ロジャーズはこれらの技法を否定しました。
来談者中心療法の根底にあるのは、「人は誰でも、自分自身の問題を最もよく知っており、それを解決し、成長していく力(自己実現傾向)を生まれながらに持っている」という深い信頼です。
治療者の3つの基本的態度(必要十分条件)
来談者(クライエント)の回復力を引き出すため、治療者には診断の知識や技術以上に、以下の3つの人間的な態度が不可欠であるとされています。
- 自己一致(純粋性)
- 治療者が、来談者との関係において、ありのままの自分でいること。
感じていること、意識していること、表現していることが一致している状態。
- 治療者が、来談者との関係において、ありのままの自分でいること。
- 無条件の肯定的関心(受容)
- 来談者の感情、思考、行動を、善悪や評価をせず、無条件に受け入れ、尊重する態度。
- 共感的理解
- 来談者の「今、ここ」での気持ちを、あたかも自分のことのように深く理解し、それを正確に来談者に伝え返すこと。
治療者は、これらの態度を徹底することで、来談者が「安全で受け入れられている」と感じ、心を開いて自己を探求し、自ら抱える問題に気づき、主体的な成長と自己回復を促すことを目指します。







